プロジェクト趣旨
自然環境問題、災害(人災を含む)、感染症、戦争・紛争などの大きな危機に直面しながら、現代社会はそのあり方を常に問われている。サステイナビリティは、第一には自然環境を不可逆的に破壊せずに維持できるかどうか(維持可能性)、第二にその範囲で経済活動を持続できるかどうか(持続可能性)を意味する。自然破壊は、自然環境なしで生きていくことができない人間自身の自己破壊につながる。そのため、自然環境の維持可能性と経済開発の持続可能性は不可分の関係にある。だが、両者は両立できるのか。これまでの人間の生き方そのものを根底から変えなければ、これからの危機を乗り越えることはできないのではないか。もし経済開発の持続可能性にこだわるなら、結局は自然破壊を止められないのではないか。こうした難問は、科学技術と政治経済の問題だから人文知は関係ないと思われがちである。だが、人間の生き方が問われているのに、人間の知的反省の営みに関わる人文知が全く無関係でいられるはずがない。
本プロジェクトでは、文理を超えた様々な分野に属する研究者・学生がそれぞれの専門を踏まえて、人類の巨大な難問と学問的な知識とをどのように関係づけるかをともに探求することを目標とする。現在は、総長裁量経費プロジェクト時代(2009〜2020年度)の成果を引き継いで、サステイナビリティ概念の哲学的検討、歴史的分析概念としてのサステイナビリティの可能性、サステイナブル人文学の構想、SDGsの意義を認めつつ、企業や国家の自己正当化の道具になっていないかの批判的検討、喫緊の社会問題(パンデミック、人口減少による地域文化のサステイナビリティ、政治的な人文知バッシング、食と地域のサステイナビリティなど)に関する対話に精力的に取り組んでいる。
研究会の運営メンバー
実施責任者
堀江宗正(人文社会系研究科教授)
小島毅(人文社会系研究科教授)
納富信留(人文社会系研究科教授)
連携教員
小貫元治(新領域創成科学研究科)
木下華子(人文社会系研究科)
斎藤幸平(総合文化研究科)
清水亮(新領域創成科学研究科)
福永真弓(新領域創成科学研究科)
森先一貴(人文社会系研究科)