第1シリーズ

2回kickoff研究会

実施概要

日時:2010年3月5日(金) 18:00~20:00
場所:東京大学法文1号館 115番教室
報告者:住明正(東京大学サステイナビリティ学連携研究機構教授 地球持続戦略研究イニシアティブ統括ディレクター)
タイトル:Sustainability Scienceをめぐって―AGSとIR3Sの経験から

報告概要

東京大学で長らく、AGSやsustainability学を主導されてきた住明正教授に、

1)東京大学がsustainability学等にどのように関わってきたか、どのような課題群があり、どのような残された課題があるのか。

2)また人文知、社会知の領域にはいかなることが期待できるのか。

3)そして専門の気候変動とサステイナビリティの関わりについて等を報告していただく。

出席者

住明正(報告者;東京大学サステイナビリティ学連携研究機構教授/地球持続戦略研究イニシアティブ統括ディレクター)、丸井浩、似田貝香門、鬼頭秀一、中西友子、吉澤誠一郎、日比真由美、岩崎陽一(以上、プロジェクトチームメンバー)

丸山康司(東京大学教養学部特任准教授)、清水亮(東京大学新領域創成科学研究科准教授)、福永真弓(立教大学社会学部助教)、友成有紀(東京大学大学院人文社会系研究科)

※肩書は当時のものです。

報告内容の概要(出席者作成)

Sustainability Science をめぐって AGSとIR3Sの経験から

東京大学では1995年以来、AGS(Alliance for Global Sustainability)を行ってきた。MIT、スイス連邦工科大学、チャルマーズ工科大学(スウェーデン)と連携するのだが、その際、各大学の性格、とくに資金のやりくりについて理念の相違は、なかなか困難な課題だった。そのなかで、東大のなかにも、戦略性・国際性の不足、社会との連携の不足、学内の連携の不足といった問題があることが自覚された。今日、TIGS*1とAGSがSustainability Science をめぐる学融合をつくりあげる基盤となっている。

自然システム、社会システム、人間システムというふうに三つのシステムの交渉という観点で整理したとき、これらシステムをバランスのとれた状態にすること、しかも、その状態で人間の幸福が確保されることをめざすことが必要となる。どのようにそれを実現するのか。この問いに答えようとすることが、Sustainability Scienceの目的であり、そうすると既存の学問分野を統合していく手法を見いだすことをめざすことになる。

確かに、これまでの経済成長の曲線がそのまま無限に上昇していくはずはない。それに対する対応は欠かせない。といっても、その際に、欲望を抑制するというような精神主義を掲げることは、あまり成功の見込みはない。結局のところ、個人の価値観に入り込むという方向は困難ばかり多く、それに対して新技術の開発で解決しようとするほうが、反対が少ないだろう。

とはいえ、技術だけでは解決できない要件も、やはりあるというほかない。たとえば、国際政治でいえば、現在の国家主権を前提とする仕組みとSustainabilityの希求とは、衝突する局面が多いなど、政治的・社会的仕組みについて調整をしなくてはならないという課題は大きい。また、AGS教育という部分でも、教育と洗脳はどのように区別をつけたらよいのだろうか。このように価値観の問題、社会システムの問題は、依然として課題であり続けている。

*1 TIGSとは、IR3S(サステイナビリティ学連携研究機構)という大学連携の一環として東大に設けられた研究拠点を指す。

(まとめ人 吉澤誠一郎)