シンポジウム
シンポジウム
2025年3月18日14時〜17時、東京大学本郷キャンパス法文1号館217教室
発題者
・玄田有史(東京大学教授 経済学)
FS(フィールドスタディ型政策政策協働プログラム)能登町支援チーム
志賀智寛、本田柊稀、能勢万道
・米村滋人(東京大学教授 法学)
・橋本禅(東京大学教授 農学)
コメンテーター
・嘉瀬井恵子(福井大学特命講師 社会デザイン学)
・赤川学(東京大学教授 社会学)
主催:東京大学大学院人文社会系研究科 死生学・応用倫理センター 「Sustainabilityと人文知」
共催:次世代人文学開発センター 多分野交流演習「サステイナビリティと人文知」
2024年1月1日に発生した能登半島地震は地域社会に甚大な被害をもたらしました。9月には追い打ちをかけるように能登半島豪雨(奥能登豪雨)が発生し、被災者の生活の状況をさらに悪化させました。
「Sustainabilityと人文知」研究基盤では、総長裁量経費プロジェクト時代からサステイナビリティを環境の維持、経済の持続、文化の継承の3点から考えてきました。その試金石として東日本大震災についても研究活動を続けてきたという経緯があります。昨年は、地震発生から3カ月後という早い時期に、それまで能登半島をフィールドとして調査研究を続けてきた研究者(日本史学、社会デザイン学、建築学)をシンポジストとして「能登半島地震と地域のサステイナビリティ」と題したシンポジウムを開催しました。
災害と人口減少に悩む日本にとって、この災害は注目し続け、論じなければならないものと考えられます。特に他の災害と比べて復興の遅れが目立っている能登半島について、外部から悲観するだけの発言や切り捨てるような発言が続いている中で、今年も引き続き、この問題を取り上げるシンポジウムを開催することに大きな意義があると思います。
当シンポジウムでは、この1年あまりの間に、東京大学の教職員、学生が、被災地の復興のためにどのような取り組みをおこなってきたのかを、3人のシンポジストが報告することにします。そこからどのような未来が見えるのかについて、能登半島と関わりの深い2人のコメンテーターがリプライいたします。それを通して、人口減少と災害に苦しむ地域社会だけでなく、日本社会のサステイナビリティについて、考えていきたいと思います。
シンポジウムの報告
2025年3月18日、東京大学本郷キャンパスにて、「能登半島の復興と未来──大学・学生・地域の協働」と題したシンポジウムが開催された。2024年1月の地震と同年9月の豪雨による甚大な被害を受けた能登半島の現状と、復興に向けた取り組みを共有する場であった。
企画を説明した堀江宗正教授は、「サステイナビリティと人文知」研究の一環としてこのテーマを継続的に扱う意義を強調した。登壇者には経済・法・農学の各専門家と、現地で活動を行った学生たちが加わり、実践的な報告が行われた。
玄田有史教授は、初期対応の重要性と、現地に「いること」の意味を語った。FS能登町支援チーム(志賀智寛、本田柊稀、能勢万道)は、写真展や祭りの支援、生活情報の発信など多面的な支援を展開してきたことを報告した。
橋本禅教授は珠洲市の復興計画委員長として、地域住民との協議と困難な現状を具体的に共有した。米村滋人教授は、災害支援の法的枠組みと、過疎地での課題について論じた。
コメンテーターの嘉瀬井恵子氏は、文化継承の重要性と学生の存在が地域にもたらす力を指摘した。赤川学教授は、実家の被災経験から公費解体のジレンマを語った。
学生たちの報告は、自らの戸惑いや葛藤、能登での出会いと実感に基づいており、共感を呼んだ。単なる支援を超え、「関係人口」としての新たな社会的つながりの構築が提案された。
都市と地方を「かき混ぜる」という発想は、災害復興を超えた社会変革の可能性を感じさせた。学問と実践が交差する貴重な場であった。