第1シリーズ

主旨文

東京大学は、持続可能な地球社会実現を目指した科学・技術の発展や環境問題への取り組みを、各教育・研究組織やAGS、sustainability教育などを介して、これまでめざましく活動してきた。

しかし地球環境の持続的発展を研究するこの分野においても、他の分野と同じように、諸学問の細分化、先端化が進み、その結果として、複雑性をもつ地球環境問題へのアプローチに対し、各専門的知識・技術がその全体性、総合性への有機的連関を失うという新たな問題も現れてきた。

他方で、人文・社会系の研究分野においては、地球環境の持続的発展の根本的前提である、持続されるべき〈人と社会のありよう〉とは何か、という根源的問いが、リーマン・ショックをきっかけに、急速に高まりつつある。

以前から、人文・社会系においては、持続されるべき〈人と社会のありよう〉と、持続可能な地球社会実現を目指す科学・技術の発展とはどのように交差するのか、という点については必ずしも十分なる対話や連携が進められてきたわけではない。

今や、地球温暖化問題やそれに起因する気候問題の緊迫度、他方で世界規模での経済社会システムの再組織化などの問題出現によって、改めて、持続されるべき〈人と社会のありよう〉と持続可能な地球社会実現のための科学・技術の発展との関係を反省的に捉えなおす必要性が強く要請されている。

そのためこのプロジェクトは、文理の壁を越え、率直に、大胆に、積極的な対話の機会を持ち、相互に連携を進められるような、理論的、実践的な基盤作りを図りたいと考えている。

元来、人文学humanitiesは、人や社会の〈生〉や〈共存〉に関する、人間共通の関心事たる諸問題を発見し、その問題解決の道を探索する学問である。そして、人や社会の〈生〉や〈共存〉に関する根源を問う普遍の言葉(概念)や論理を重視し、それらを理論的、経験的に諸学を相互に結びつけ、有機的に統合された全体像を構築しようとする知的営みである。