第1シリーズ

第16回kickoff研究会

実施概要

日時:2014年12月3日(水) 18:00~20:00
場所:東京大学弥生総合研究棟3Fプロジェクト・セミナー室
報告者:高橋桂子氏(海洋研究開発機構地球情報基盤センター長)

専門は大気と海洋の相互作用に関する超高速、超並列高精度計算。
日本学術会議「科学者からの自律的な科学情報の発信の在り方検討委員会」委員長として、緊急時の情報公開のための制度構築をもとめる提言をとりまとめつつある。

タイトル:「科学技術と社会の境界の危機を越えて―福島原発事故後における制度変革の試み」

司会:松本三和夫

企画内容

「科学技術と社会の境界の危機を越えて―福島原発事故後における制度変革の試み」

この企画のねらいは、ポスト福島状況においてこれまで注目されていない問題に科学技術の側面からあえて光をあてることにより、問題の社会的な意味を浮き彫りにし、問題解決の方向性を展望することにある。復興と聞くといちはやく科学技術を役立てる必要が思い浮かぶ反面、それだけでよいのだろうかと感じる。なぜなら第一に、福島原発事故においては、科学的な判断が万人にもとめられていたにもかかわらず、ときどきの政治的、社会的な都合で必要な科学情報が当事者に届かなかったからである(その状況を不問にすることは同様の状態を再生産しかねない)。

第二に、科学技術のそのような状況を対岸の火事とみる暗黙の想定が人文・社会科学の側に存在する可能性は、ゼロでないと思われるからである。本企画は、第一の問題状況に即し、緊急時における科学者の行動のあり方の問題に真摯に向き合おうとしている科学者の試みに注目する。とくに、科学情報、一般に学術情報は万人にとっての公共財であるにもかかわらず、必要なときに沈黙を続けるような状況そのものを内発的に変革する試みを紹介する。そして、そこからさまざまな教訓を引きだし、実りある議論ができればなによりと考える。

(企画担当 松本三和夫)